昨年の全国消費者物価指数が3年連続のマイナスとなり、デフレ脱却の道のりが険しいことが印象づけられた。背景には、円高などで収益が悪化した企業が賃金を上げられず、消費者の財布のヒモが緩まないことがある。一方で原材料費高騰など「悪いインフレ」も忍び寄る。企業が苦境に陥れば雇用環境などはさらに悪化。需要と供給のギャップが一段と拡大する負の連鎖が加速しかねない。
「日銀と一体となって速やかに安定的な物価上昇を実現することを目指す」。野田佳彦首相は27日午後の衆院本会議でこう語り、デフレへの危機感を示した。
昨年12月時点で価格下落が目立つのは家電を中心とする耐久財だ。薄型テレビや冷蔵庫は3割超も値崩れした。外食産業も厳しい。牛丼チェーンでは松屋フーズが今月16日、主力の「牛めし」の通常価格を並盛りで280円に引き下げるなど値下げ合戦が続く。
デフレが解消しないのは「東日本大震災や円高による収益環境の悪化で企業が賃金を上げられず、需要が高まらないため」(農林中金総合研究所の南武志主任研究員)だ。日本企業の潜在的な供給力に対し、実際の需要がどれほど不足しているかを示す需給ギャップは、年間で約15兆円。消費者の買い控えに売り手は値下げせざるを得ない。
欧州債務危機を背景に海外経済は低迷し、円高圧力はなお強い。
春闘でも経団連は賃金水準を引き上げるベースアップを「論外」とする。賃金が上がらない→需要低下→企業収益悪化→賃金が上がらない…という負の連鎖が今後も続く可能性が十分にある。